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宇都宮地方裁判所 昭和41年(ワ)449号 判決

主文

1. 原告らの請求はすべてこれを棄却する。

2. 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の申立

一、原告ら

1. 被告は原告らが被相続人亡安生善一郎の相続人として、同人の遺産につき、いずれも五分の一の持分所有権を有することを確認する。

2. 被告は別紙目録(一)記載の建物につき、宇都宮地方法務局鹿沼出張所昭和二五年一一月一三日受付第九八六号をもつてなされた被告のための所有権保存登記を原告らおよび被告が各五分の一の持分所有権を有する旨の所有権保存登記に更正登記手続をせよ。

3. 被告は別紙目録(二)記載の土地につき、宇都宮地方法務局鹿沼出張所昭和二五年一一月一三日受付第九八一号をもつてなされた被告のための所有権取得登記を原告らおよび被告が昭和二三年二月二六日相続を原因とし各五分の一の持分所有権を取得した旨の登記に更正登記手続をせよ。

4. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告――主文同旨。

第二、当事者の主張

一、原告らの請求の原因

1. 原告らはいずれも昭和二三年二月二六日に死亡した亡安生善一郎の子である。

2. 亡安生善一郎には、その死亡当時、妻はすでに亡く、原告らのほか訴外安生芳郎、同安生栄作、同安生三雄、同鈴木ミヨ、同野沢ミヱ、同中島イヱおよび同安生キミが子としていたが、右訴外安生芳郎を除くその余の訴外人らはすべて相続放棄をした。

3. しかして、別紙目録(一)および(二)記載の不動産はすべて亡安生善一郎の遺産である。

4. ところで、右訴外安生芳郎は昭和二五年一月一日死亡し、被告は同訴外人の妻である。

5. しかるところ、別紙目録(二)記載の土地につき、右訴外亡安生芳郎の単独相続、かつ、同訴外人の死亡による被告の単独相続を原因とする前記原告らの申立3項記載のとおりの被告のための所有権取得登記が、また、別紙目録(一)記載の建物につき同じく原告らの申立2項記載のとおりの被告のための所有権保存登記が存在する。

6. よつて、原告らは被告に対し、亡安生善一郎の遺産に対する相続分に応じた各五分の一の持分所有権に基づき、その包括的な持分所有権存在の確認を求めるとともに、別紙目録記載の不動産につき、いずれも前記申立の趣旨のごとき更正登記手続を求める。

二、右に対する被告の認否

請求の原因1項ないし5項の各事実をすべて認め、同6項の主張は争う。

三、被告の抗弁

原告らは亡安生善一郎が死亡した当時、すでに母が死亡しており、かつ、いずれも未成年であつたところ、原告らの兄である訴外安生三雄が宇都宮家庭裁判所により原告らの後見人に選任され、これに就職した。しかるところ、同訴外人は昭和二三年五月一一日宇都宮家庭裁判所に対し、後見人として原告らを代理し、原告らが亡安生善一郎に対する相続に関し、相続放棄する旨の申述をなしそのころ右申述はいずれも受理された。

四、右に対する原告らの認否

抗弁事実はすべて認める。但し、以下のとおりその効果は争う。

五、原告らの再抗弁

1. 訴外安生三雄は同訴外人が原告らの後見人に選任・就職したことを、その選任・就職当時全く関知せず、従つて、同訴外人の後見人選任・就職手続は瑕疵ある無効のものである。

2. 仮に右後見人選任・就職手続が有効としても、右訴外人は被告主張の原告らの相続放棄の申述をなしたことがなく、右申述は同訴外人の関知しない偽造によるものであつて無効である。

六、右に対する被告の認否

再抗弁事実はすべて否認する。

七、被告の再々抗弁

1. 仮に原告らの再抗弁が理由があるとしても、原告らの相続回復請求権は時効により消滅している。すなわち、訴外安生三雄は昭和二三年四月二七日原告らの後見人に就職しているところ、右訴外人は右就職当時、原告らが本件相続から除外されていることを知つていたものであるから、右就職の時から五年の経過により原告らの相続回復請求権は消滅した。

2. 仮に右が理由がないとしても、訴外安生三雄は昭和二六年二月一日宇都宮家庭裁判所において、原告らの後見人として、原告らと被告間の財産分与請求調停事件に関与して、実質的には亡安生善一郎の遺産を一部原告らにも分与する旨の調停が成立しているのであるから、少なくも右の時には原告らが本件相続から除外されていたことを知つていたものであるから、その時から五年の経過をもつて原告らの相続回復請求権は消滅した。

八、右に対する原告らの認否

再々抗弁事実はすべて否認する。

第三、証拠関係(省略)

(別紙)

目録(一)

鹿沼市楡木町四五八番地

家屋番号 二一八番

一、居宅 木造瓦葺平家建

八五、三八平方米(二五、八三坪)

附属建物第一号

一、倉庫 石造瓦葺二階建

一階 四一、九五平方米(一二、六九坪)

二階 三三、〇五平方米(一〇坪)

同第二号

一、倉庫 土蔵造亜鉛メツキ鋼板葺二階建

一階 一六、五二平方米(五坪)

二階 一六、五二平方米(五坪)

同第三号

一、倉庫 土蔵造瓦葺平階建

三三、〇五平方米(一〇坪)

目録(二)

鹿沼市楡木町字開運町四五五番の二

一、宅地 八二、六四平方米(二五坪)

同所四五八番

一、宅地 二九〇、九〇平方米(二二八坪)

同所四五九番の二

一、宅地 一二二、三一平方米(三七坪)

同市同町字上木戸四五六番の二

一、山林 三九、六六平方米(一二坪)

同所四五七番

一、山林 三〇四、一三平方米(三畝二歩)

同所四六〇番の二

一、山林 六二、八〇平方米(一九歩)

同市同町字石原七七〇番の二

一、山林 六、六一平方米(二歩)

同市同町字山ノ神一四四三

一、山林 六〇四、九五平方米(六畝三歩)

同所一四四四番

一、山林 八三三、〇五平方米(八畝一二歩)

同所一四四八番

一、山林 八七二、七二平方米(八畝二四歩)

同所一四四九番

一、山林 一七五五、三七平方米(一反七畝二一歩)

同所一四五二番

一、山林 一四八七、六〇平方米(一反五畝歩)

同市同町字宮浦一四九〇番

一、山林 一〇九〇、九〇平方米(一反一畝歩)

同所一四九〇番の二

一、山林 九五、八六平方米(二九歩)

同市同町字銭神一一三一番二

一、田 二〇四、九五平方米(二畝二歩)

同所一一三九番

一、田 一七七八、五一平方米(一反七畝二八歩)

同所一一二七番

一、田 一五九六、六九平方米(一反六畝三歩)

同所一一二八番

一、田 五〇二、四七平方米(五畝二歩)

同所一一四二番

一、田 四〇六、六一平方米(四畝三歩)

同市同町字水深一一六一番

一、田 六、六一平方米(二歩)

同市同町字銭神一一四〇番

一、田 五七五、二〇平方米(五畝二四歩)

同所一一四三番

一、田 二〇四、九五平方米(二畝二歩)

同所一一四四番

一、田 七二三、九六平方米(七畝九歩)

同市同町字東浦一八一番の三

一、畑 一〇七四、三八平方米(一反二五歩)

同市同町字上木戸七〇七番一

一、畑 六九、四二平方米(二一歩)

同所七〇七番二

一、畑 三五七、〇二平方米(三畝一八歩)

同所七一三番一

一、畑 二六、四四平方米(八歩)

同所七一三番二

一、畑 四〇三、三〇平方米(四畝二歩)

同所七一三番三

一、畑 三一四、〇四平方米(三畝五歩)

同所七一三番四

一、畑 二五四、五四平方米(二畝一七歩)

同所七一三番五

一、畑 二五四、五四平方米(二畝一七歩)

同所七一三番六

一、畑 二三一、四〇平方米(二畝一〇歩)

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